永正2年(1505)以前の創業以来、伊丹から灘へと醸造の舞台を移しながら、500年以上にわたり剣菱は酒を造り続ける蔵。原点は、江戸時代末期に書かれた「守貞謾稿」(のちの「近世風俗史」)のなかで剣菱の商標とともに記された「古今第一トス」の文字。「昔も今もいちばん良い酒である」といわれた剣菱を「今」に受け継いでいることに、強い誇りと使命感を持つ。剣菱の味は、かつての造り手たちが守り続けてきたものではなく、かつての造り手とお客さまとで守り続けられてきたもの。500年間この味で得た評価で、引き続き剣菱の味を潔く守る。剣菱が造るうえで心がけているのは、先代(2代目社長)・白樫政一の訓えである「止まった時計のままでいる」。そのときどきの流行に合わせようとして時計のスピードをその都度速めてしまっては、24時間の間に一度として時計の針が正しい時間を指すことはないが、時代がどう移り変わろうと常に止まった時計のままでいれば、24時間の間に必ず2回は時計の針が正しい時間を指す。剣菱の味が変わらなければ、剣菱を飲むたびにその思い出を甦らせることができ、思い出のなかで剣菱の味が生き続けている限り、「止まった時計のままでいる」ことは剣菱の義務であるといえる。いにしえより不変の「古今第一トス」という文字、そして、墨くろぐろと縦、横ひと筆ずつの商標。剣菱の揺るぎない精神と原点は、多くを語るより、このことがすべてを物語る。剣菱は、不変の美を貫き、酒文化を未来へと継承し、昔も、今も、これからも、感謝の気持ちを込めて世に愛される酒を造り続ける蔵。